坂上吉一 元 近畿大学;現 日本防菌防黴学会
小藤田久義 岩手大学
辻村舞子 秋田県立大学
中山素一 九州産業大学
宮本敬久 九州大学
中野宏幸 広島大学大学院
落合秋人 新潟大学
谷口正之 新潟大学
提箸祥幸 農業・食品産業技術総合研究機構
西村麻里江 農業・食品産業技術総合研究機構
辻 朗 小島プレス工業㈱
田中貴章 小島プレス工業㈱
小塚明彦 小島プレス工業㈱
数岡孝幸 東京農業大学
和田夏美 九州大学
善藤威史 九州大学
園元謙二 九州大学
野田正文 広島大学
杉山政則 広島大学
永尾寿浩 大阪産業技術研究所
大﨑久美子 鳥取大学
尾谷 浩 鳥取大学
永田宏次 東京大学
川上 浩 共立女子大学
小磯博昭 三栄源エフ・エフ・アイ㈱
金谷秀治 大洋香料㈱
永利浩平 ㈱優しい研究所
手島大輔 ㈱トライフ
伊福伸介 鳥取大学
佐々木 満 熊本大学
江島広貴 東京大学
田口精一 東京農業大学;北海道大学
相沢智康 北海道大学
小田 忍 金沢工業大学
伊藤 健 関西大学
天然系抗菌・防カビ剤とは,自然界から得られる微生物の増殖を抑える有用な抗菌性物質の総称である。それらのルーツは,植物由来,微生物由来,動物由来等多岐にわたる。近年の天然由来成分の嗜好(流行)を踏まえて,多くの化合物が登場してきている。それらの中には,食品衛生法で食品添加物としての使用が許可されているものも多い。天然系抗菌・防カビ剤は比較的古くからの使用実績があり,使用者にとって安全・安心を認識しやすい化合物も多く,今後も適宜登場してくるものと思われる。また,天然系抗菌剤は,合成系抗菌剤に比べて耐性菌が生じにくいことも特徴の一つであるとされている。
近年,抗生物質を含めた抗菌剤による薬剤耐性菌問題が,日本だけでなく世界レベルで大きな問題の一つとなっている。その対策は種々講じられているが,大きな成果があがっているとは言い難いのが現状と思われる。過度な使用を避け,適正使用が対策の一つとされている。合成系抗菌剤に比べて耐性菌が生じにくいとされている天然系抗菌剤の適正使用は,意義あるものと思われる。
(本書「はじめに」より一部抜粋)
【第Ⅰ編 総論】
第1章 抗菌・防カビ剤の種類(天然系,無機系,合成系)と特徴,利用動向
1 抗菌剤
2 天然系抗菌剤
3 合成系抗菌剤
3.1 無機系合成抗菌剤
3.2 有機系合成抗菌剤
4 その他(ハイブリット系および固定化抗菌剤)
4.1 ハイブリット系
4.2 固定化抗菌剤系
5 防カビ剤
6 抗菌剤の利用動向
7 抗菌剤および防カビ剤の開発経緯と将来性
8 市場動向
第2章 抗菌・防カビの検査・評価法
1 抗菌性試験法の現状
1.1 抗菌性試験法
1.2 光触媒の抗菌性評価法
1.3 抗菌加工製品の抗菌性能基準
1.4 その他の主な抗菌性試験法
2 防カビ試験法
2.1 JIS Z 2911:2010 :2018(かび抵抗性試験方法)
2.2 JIS R 1705:2016(ファインセラミックス-光照射下での光触媒抗かび加工製品の抗かび性試験方法)
2.3 JIS L 1921:2015(ATP 発光測定法)
【第Ⅱ編 探索・開発】
<植物由来>
第1章 スギテルペノイドの抗菌活性
1 はじめに
2 スギ樹皮テルペノイド類の抗菌活性
2.1 スギ樹皮および有機溶媒抽出物の抗菌活性
2.2 スギ樹皮ヘキサン抽出物に含まれる抗植物病原菌成分
2.3 スギ樹皮の主要ジテルペン類およびその抗細菌活性
3 スギ材乾燥排液から得られるジテルペン類の抗菌活性
3.1 スギ材乾燥排液からのジテルペン類の分離精製
3.2 スギ材乾燥排液から単離されたテルペノイド類の抗菌活性
4 まとめ
第2章 カテキン類の抗菌作用機構
1 はじめに
2 カテキン類の抗菌活性
2.1 カテキン類単独の抗菌活性
2.2 カテキン類と他の薬剤との併用効果
3 細菌菌体に作用したカテキン類の可視化
4 カテキン類の細菌菌体タンパク質への作用
4.1 グラム陽性菌に対する作用
4.2 グラム陰性菌に対する作用
5 カテキン類の吸着に対する菌体の応答
6 おわりに
第3章 植物由来抗菌物質とハードルテクノロジーによる食中毒菌の制御
1 はじめに
2 植物由来抗菌物質
3 ハードルテクノロジー
4 植物抽出液によるハードルテクノロジー食中毒菌の制御
4.1 食中毒細菌に対する植物抽出液の抗菌性
4.2 植物抽出液と他の制御因子を組み合わせた制御
5 おわりに
第4章 コメ由来ディフェンシンの抗真菌活性と医薬品素材への展開
1 はじめに
2 イネディフェンシンの多様性
3 OsAFP1の抗真菌活性と構造安定性
4 OsAFP1の抗真菌メカニズム
5 OsAFP1の抗真菌活性に関わる構造要因
6 今後の展開
第5章 蒸着重合法による防カビフィルムの作製
1 はじめに
2 蒸着重合とは
2.1 薄膜形成手法
2.2 蒸着重合
3 蒸着重合の歴史
4 徐放性蒸着重合膜の作製
4.1 材料選定
5 防カビ資材
5.1 構成
5.2 徐放性能
5.3 湿度依存性
5.4 食品安全性
6 今後の展開
<微生物由来>
第6章 麹菌由来の抗菌物質(イーストサイジン)
1 はじめに
2 イーストサイジン高生産菌の探索
3 イーストサイジン活性を有する培養液の調製
4 抗菌活性の測定
5 イーストサイジン粗物質の調製
6 イーストサイジンの性質
6.1 安定性
6.2 抗菌試験培地のpHおよび培地中に添加した金属イオンの抗菌活性への影響
6.3 抗菌作用様式
6.4 変異原性試験
6.5 抗菌スペクトル
7 イーストサイジンの利用例
8 おわりに
第7章 乳酸菌バクテリオシンの探索とその利用
1 はじめに
2 乳酸菌バクテリオシンとは
2.1 乳酸菌バクテリオシンの特徴
2.2 乳酸菌バクテリオシンの分類
3 新奇乳酸菌バクテリオシンの探索
4 乳酸菌バクテリオシンの生合成と作用機構
5 乳酸菌バクテリオシンの利用
5.1 食品保存料(ナイシン製剤「ニサプリン」)
5.2 ナイシン含有洗浄剤組成物
5.3 乳房炎予防剤・治療剤
5.4 口腔ケア剤
6 バクテリオシンの強化と生産系の構築
7 おわりに
第8章 植物由来乳酸菌と麹菌の産生する物質による病原性微生物の制御
1 緒言
2 植物乳酸菌の産生する抗菌ポリペプチド —— バクテリオシン
3 抗ピロリ物質を産生する植物乳酸菌
4 植物乳酸菌による病原因子の発現制御
5 麹菌による病原性微生物の制御
6 結語
第9章 選択的抗菌活性を有する脂肪酸の植物油からの微生物変換
1 ヒトと微生物の関わりおよび選択的抗菌活性の意義
2 皮膚細菌叢とアトピー性皮膚炎
3 微生物変換による希少脂質の製造
4 微生物変換で得られた7-cis-C16:1の選択的抗菌活性
5 おわりに
第10章 きのこ由来揮発性物質の植物病原菌類に対する抗菌作用
1 はじめに
2 きのこ由来VAの活性検定
3 芳香臭きのこ由来のVA
4 食用きのこ由来のVA
4.1 ブナシメジのVA
4.2 きのこ廃菌床から放出されるVA
5 おわりに
<動物由来>
第11章 乳タンパク質ラクトフェリンの抗ウイルス・抗菌作用と活性増強
1 ラクトフェリン分子の特徴
2 ラクトフェリンの抗ウイルス作用
3 ラクトフェリンの抗ウイルス作用機序
4 抗HBV活性
5 抗HCV活性
6 抗HIV活性
7 ラクトフェリンの抗菌作用
8 ラクトフェリン由来ペプチドの抗菌作用
9 ラクトフェリンおよびそのペプチドの抗ウイルス剤・抗菌剤としての利用
【第Ⅲ編 応用・利用】
第1章 天然系抗菌成分の食品添加物としての利用
1 はじめに
2 カラシ抽出物
3 リゾチーム
3.1 リゾチームの抗菌効果
3.2 リゾチームの安定性
3.3 リゾチームの効果的な使い方
4 ナイシン
4.1 ナイシンの抗菌効果
4.2 ナイシンの安定性
4.3 ナイシンの効果的な使い方
5 ε-ポリリジン,プロタミン
5.1 ε-ポリリジン,プロタミンの抗菌効果
5.2 ε-ポリリジン,プロタミンの安定性
5.3 ε-ポリリジン,プロタミンの効果的な使い方
6 おわりに
第2章 ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルによる体臭抑制素材への応用
1 はじめに
2 皮膚常在細菌による体臭の発生経路
3 多価アルコール型抗菌剤の抗菌性
4 ヒト腋における皮膚常在菌の抑制効果試験
5 リシノレイン酸グリセリルの残留性の評価
6 リシノレイン酸グリセリルの殺菌作用機構の確認
7 おわりに
第3章 乳酸菌由来抗菌ペプチドを用いた口腔ケア用製剤「ネオナイシンⓇ」
1 はじめに
2 乳酸菌由来抗菌ペプチド
2.1 ナイシン
2.2 高精製ナイシン
3 口腔用天然抗菌剤「ネオナイシンⓇ」
4 乳酸菌由来抗菌ペプチド製剤「ネオナイシンⓇ」の応用
5 乳酸菌由来抗菌ペプチド製剤「ネオナイシン-eⓇ」への進化
6 今後の展望
第4章 カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」を用いた抗菌剤の開発
1 カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」
2 キチンナノファイバーに対する抗菌性の付与
2.1 表面脱アセチル化キチンナノファイバーフィルム
2.2 N-ハラミン化キチンナノファイバーの抗菌性
2.3 銀ナノ粒子を担持したキチンナノファイバーの抗菌性
【第Ⅳ編 生産・技術】
第1章 超臨界流体・亜臨界水・マイクロ波を用いた高効率精油抽出技術
1 はじめに
2 柑橘果皮からの精油抽出技術
2.1 超臨界二酸化炭素を利用した柑橘果皮精油の抽出
2.2 水熱マイクロ波蒸留技術を利用した柑橘果皮精油の抽出
3 おわりに
第2章 ポリフェノール模倣高分子の精密重合
1 はじめに
2 ポリフェノール模倣高分子の精密重合
3 ポリフェノール模倣高分子の抗酸化能
4 ポリフェノール模倣高分子の接着能
5 おわりに
第3章 昆虫由来抗菌ペプチドの作用メカニズム解明と進化工学
1 イントロダクション
2 アピデシンの作用メカニズム解明の変遷
3 アピデシンの作用標的の特定
4 アピデシンの進化工学的高活性化
4.1 進化工学システムの構築
4.2 進化工学研究から合理的高活性化へ
5 タナチンの作用メカニズム解明の変遷
6 タナチンの進化分子工学的高活性化
7 私見と今後の展開
第4章 遺伝子組換え微生物による抗菌ペプチドの生産技術
1 遺伝子組換え抗菌ペプチド生産技術の重要性
2 遺伝子組換え抗菌ペプチドの可溶性画分での生産
3 遺伝子組換え抗菌ペプチドの不溶性画分での生産
4 おわりに
第5章 界面バイオプロセスによる抗菌物質生産カビ・放線菌のスクリーニングと抗菌物質の高生産
1 はじめに
2 浮上性微粒子を用いた液体培地液面でのカビマットの形成
3 液/液界面培養法による抗菌物質生産カビのスクリーニング
4 液/液界面培養法による生物活性物質の高濃度生産
5 固/液界面培養法による抗菌物質生産カビ・放線菌のスクリーニング
6 おわりに
第6章 ナノ構造に起因する抗菌・殺菌効果
1 はじめに
2 昆虫の翅にあるナノ構造と抗菌特性
3 ナノ構造の作製法と表面特性の調整
4 抗菌評価
5 細胞レベルでの殺菌評価
6 まとめ