水上貴央 早稲田リーガルコモンズ法律事務所/NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会
編集幹事
江口智子 東京駿河台法律事務所
佐藤康之 松田綜合法律事務所/NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会
執筆者一覧(執筆順)34名
水上貴央 早稲田リーガルコモンズ法律事務所/NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会
大坪祐紀 経済産業省
菅野奈穂 農林水産省
田中信一郎 長野県 環境部環境エネルギー課
田中克己 飯田市 産業経済部金融政策課
諸富 徹 京都大学
神戸秀彦 関西学院大学
北嶋 守 一般財団法人機械振興協会
青島矢一 一橋大学
三木朋乃 中央大学
安田 陽 関西大学
長山浩章 京都大学
江口智子 東京駿河台法律事務所
千葉恒久 五反田法律事務所
佐藤康之 松田綜合法律事務所/NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会
斉藤 長 一般社団法人日本風力発電協会
川副聖規 九州電力(株)
小澤英明 西村あさひ法律事務所
古矢千吉 水力アカデミー
菅原 良 一般社団法人日本有機資源協会
西川省吾 日本大学
菊池達人 テュフズードジャパン(株)
江口直明 ベーカー&マッケンジー法律事務所
中西繁隆 電源開発(株)
馬場史朗 (株)三菱総合研究所
寺崎康介 (株)インターリスク総研
谷口 彰 おひさま進歩エネルギー(株)
伊藤伸一 うさんこやま電力合同会社
十河正信 うどん県電力(株)
喜田浩一 うどん県電力(株)
稲垣憲治 公益財団法人東京都環境公社
山本政雄 一般財団法人中之条電力
井上保子 非営利型株式会社宝塚すみれ発電
吉岡 剛 認定NPO法人環境エネルギー政策研究所
昨今,化石資源の枯渇,地球温暖化の問題が危惧されている状況のなかで,持続可能社会の構築に向けた再生可能エネルギーへの取り組みが注目されている。
ただ,再生可能エネルギーは,環境には優しいがコスト高であるという認識がいまだに根強い。しかし,世界の潮流は,再生可能エネルギーによる発電事業がビジネスとして成立するという段階に入りつつある。COP21 において宣言されたパリ協定と今後加速するであろうカーボンプライシング(炭素排出権取引や炭素税)は,再生可能エネルギーの経済合理性をよりいっそう高めることになるだろう。日本における原子力発電所の再稼働や大型石炭火力発電の開発といった議論とは裏腹に,世界規模の再生可能エネルギーへのシフトは加速しており,中長期的には日本もその流れにあらがうことはできない。
実際に再生可能エネルギー発電事業を行う場合,根幹となる制度である固定価格買取制度の理解が当然必要であるが,それだけでなく,土地利用規制や環境規制など,さまざまな関連法規についての知見が必要である。また,現実に事業に投資し運用していくためには,事業計画の立案や資金調達,メンテナンスを含む事業運営など,さまざまな実務的なノウハウも必要である。
そこで,本書では,再生可能エネルギーを巡る関連法規について,実際の制度設計者である省庁担当者の方々の知見をお借りしながら整理した。また,業界団体や事業主体や実務家の方々に執筆に参加していただき実務的な重要ポイントについても紹介している。さらに,この分野の一線級の学者の方々には,その専門性を活かしてそれぞれ深掘りした議論を展開していただいた。
多くの専門家の執筆陣にご尽力いただき本書を完成することができたことは,望外の喜びであり,ご執筆,ご協力いただいた方々に心よりお礼申し上げたい。
本書は,再生可能エネルギー分野に携わっている方,技術者,研究者,自治体はもとより,法整備,資金ファイナンス関連から今後この分野に参入される方にとって必携の書である。
また,本書の企画から出版に至るまで,編集幹事諸氏には多大なご協力とご尽力を賜ったことに謝意を申し上げたい。株式会社エヌ・ティー・エス代表取締役吉田隆氏と編集プロダクションオフィスMA の蘆田真澄氏の熱意とご尽力により出版にこぎつけられたことにも併せて感謝申し上げたい。
2016 年3 月吉日
編者を代表して
水上貴央
◆序 論
◆政策編
第1章 国・自治体における再生可能エネルギー対策
第1節 関係省庁の取り組み
1.経済産業省 再生可能エネルギー導入推進・規制緩和と展望 大坪祐紀
1.はじめに
2.再生可能エネルギーの導入推進施策
3.再生可能エネルギーの自立に向けた環境整備
4.再生可能エネルギー活用の展望
2.農林水産省 農山漁村の活性化に資する再生可能エネルギー 菅野奈穂
1.はじめに
2.農山漁村の活性化に資する再生可能エネルギー
3.農山漁村再生可能エネルギー法
4.営農継続型太陽光発電設備
5.まとめ
第2節 自治体の取り組み
1.長野県 環境エネルギー戦略が目指す地域の活性化 田中信一郎
1.政策の根拠と方針
2.基本的な考え方
3.自然エネルギー信州ネット
4.モデル事業による知見の普及
5.小水力発電の促進
6.資金調達の支援
7.木質バイオマス利用・グリーン熱の普及
8.建物への再エネ普及
9.まとめ
2.飯田市 条例による環境エネルギー推進支援 田中克己
1.はじめに
2.地域環境権条例の制定経緯
3.地域環境権条例の機能
4.地域住民主導で再生可能エネルギー事業を進める意義
第3節 政策への提言 再生可能エネルギーは地域創生の鍵となる 水上貴央
1.再生可能エネルギー発電事業と地域貢献
1.はじめに
2.再エネ発電事業と地域貢献
2.固定価格買取制度の課題と公共支援の必要性
1.固定価格買取制度の課題
2.公共による支援の基本方針3つの視点
3.信用力支援6つの方策
4.まとめ
第2章 海外事例
1.ドイツにおける再生可能エネルギー政策と経済的意義 諸富 徹
1.ドイツ再生可能エネルギー2014年改正法とその「市場化」政策
2.2014年改正法がもたらす費用への影響
3.ドイツ再生可能エネルギー政策の経済影響評価
2.ドイツにおける再生可能エネルギー法の発展―制定・修正 神戸秀彦
1.再生可能エネルギー法へ至る道
2.再生可能エネルギー法
3.再生可能エネルギー法の成果の検証
4.太陽光発電と再生可能エネルギー法
3.デンマークのエネルギー政策と風力発電 北嶋 守
1.デンマーク風力発電の歴史
2.2000年以降のデンマークの風力発電の動向
3.まとめ
4.アイスランドの地熱利用 青島矢一 三木朋乃
1.アイスランドにおける地熱開発の歴史
2.アイスランドの地熱発電所
3.アイスランドの地熱資源開発にかかわるプレーヤー
4.地熱エネルギー活用上の課題克服
5.まとめ
第3章 日本における今後の方向性
1.電力自由化に向けた系統連系と運用 安田 陽
1.はじめに
2.風力発電の大量導入の現状
3.系統運用
4.電力市場
5.系統計画
6.電力自由化と再エネ大量導入の関係
7.まとめ(日本への示唆)
2.電力システム改革と発送電 長山浩章
1.はじめに
2.電力システム改革の工程
3.発送電分離のインパクト
4.発送電の形態
5.電力広域的運営推進機関(広域機関)
6.卸電力取引
7.小売市場自由化
8.発送電分離と再生可能エネルギー導入
9.我が国の電力システムの課題
3.固定価格買取制度の意義と課題 江口智子
1.固定価格買取制度の意義
2.固定価格買取制度の課題
3.再生可能エネルギー導入促進のために
4.エネルギー転換の原動力とは―ドイツの例から探る 千葉恒久
1.市民が引いた引き金
2.現実に追いつけない専門知識
3.市民が担うヴェンデ
4.大型施設の偏重を阻む制度
5.自治体によるエネルギー政策
6.エネルギー転換を支える市民意識
7.日本で必要な制度改革
◆法規編
第1章 電気事業法と再エネ特措法
1.電気事業法改正の内容と再生可能エネルギー事業への影響 江口智子
1.電力システム改革と電気事業法の改正
2.再生可能エネルギー導入の観点からの電気事業法概説
3.今後注目すべき改正内容
2.再エネ特措法のポイントと改正の方向性 水上貴央
1.固定価格買取制度の本質的意義
2.再エネ特措法の規定
3.固定価格買取法改正の動き
第2章 太陽光発電 佐藤康之
1.関連法規解説
1.はじめに
2.電気事業法
3.都市計画法
4.建築基準法
5.農地法
6.工場立地法
2.関連法規対応Q&A
Q1.設置する際の関連法律で,電気事業法及び再エネ特措法以外で重要なものは何か。
Q2.建築確認が必要なケースはどのようなものがあるか。
Q3.土地に自立して設置する太陽光発電設備の取扱いはどうなるか。
Q4.建築物の屋上に設置される太陽光発電設備等の建築設備の高さの算定にかかわる取扱いはどうなるか。
Q5.農地を利用して太陽光発電を設置する際に問題になる点はあるか。
Q6.太陽光発電事業における「主任技術者不選任承認」とはどのようなものか。
Q7.景観法に基づく届出が必要なのはどのような場合か。
Q8.屋根貸しについて知りたい。
Q9.工場立地法と太陽光発電の問題は何か。
第3章 風力発電 斉藤 長
1.関連法規解説
1.はじめに
2.立地調査に関する関係法
3.建設工事に関する関係法
4.環境
2.関連法規対応Q&A
Q1.風車を建てるためにはどれくらいの土地が必要か。
Q2.保安林内に風力発電設備を設置する場合の手続きはどのようなものがあるか。
Q3.農地法と「農地転用不許可の例外」事業について。
Q4.洋上風力発電設置において必要な届け出にはどのようなものがあるか。
Q5.風車から出る低周波音の人体に与える影響はどのようなものがあるか。
Q6.風力発電設置に際し,環境影響評価法に基づく環境アセスメントの問題点は。
Q7.風力発電の設備利用率はどうやって計算するのか。
Q8.風力発電の今後の展望は。
第4章 地熱発電
1.関連法規解説 川副聖規
1.はじめに
2.資源調査・敷地造成,坑井掘削に伴う許認可手続き
3.発電所建設に伴う許認可手続き
4.運転開始までに行う許認可手続き
5.運転開始後に行う許認可手続き
6.まとめ
2.関連法規対応Q&A 小澤英明
Q1.設置する際の関連法律で,電気事業法及び買取法以外で重要なのは何か。
Q2.日本の地熱資源は豊富だが,なぜ地熱発電が普及しないのか。
Q3.温泉井掘削許可申請は,誰にどのように申請すればよいか。そのハードルは高いのか。
Q4.自然環境保全審議会温泉部会の委員構成について知りたい。
Q5.国立・国定公園内での地熱開発と規制について知りたい。
Q6.自然公園内における地熱発電施設の設置に特別な許可が必要か。
Q7.地熱発電所からの熱水利用と水質汚濁防止法の規制について知りたい。
Q8.ボイラータービン主任技術者の選任範囲について知りたい。
Q9.温泉権については,どこに相談すればよいのか。
第5章 中小水力発電 古矢千吉
1.関連法規解説
1.はじめに
2.自然公園法
3.自然環境保全法
4.森林法
5.河川法
6.砂防法(表14)
2.関連法規対応Q&A
1.自然公園法
Q1.特別保護区で水力発電所を開発できるか。
2.森林法
Q2.発電事業に該当する保安林の指定を解除する要件のひとつである,公益上の理由とは何か。
Q3.保安林内に水力発電を開発することはできないのか。
3.河川法
Q4.水力発電所を新設する場合,河川法の許可手続きとして何が必要か。
Q5.水力発電所を設置するための水利使用許可申請にはどのような手続きが必要か。
Q6.慣行水利の水路に水力発電所を設置するための水利申請にはどのような手続が必要か。
Q7.水利使用許可等の処分権者は誰か。
Q8.河川区域,河川保全区域とはどういう区域か。
Q9.導水路は河川区域から外れているのに,導水経路の位置や構造を変更する場合は,「河川管理者の承認を受けなければならない」のはなぜか。
Q10.発電所の新設工事で掘削が必要になる場合,すでに第26条の許可を得ていても, 第27条の申請が必要か。 4 砂防法
Q11.砂防指定地において,許可の必要な行為とは何か。
第6章 バイオマス発電 菅原 良吉
1.関連法規解説
1.バイオマスの種類
2.バイオマス活用の意義
3.バイオマス活用方法
4.バイオマス発電施設の概要
5.バイオマス発電関連法規
2.関連法規対応Q&A226
Q1.バイオマス発電設備を設置する際の関連法律で,電気事業法及び電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法以外で重要なものは何か?
Q2.バイオマス発電において,原材料ごとの関連法規とその対応について知りたい。
Q3.食品リサイクル法との関連はどうなるのか?
Q4.林地残材を使用するに際してどのような問題点があるか?
Q5.木質バイオマス導入における問題点は?
Q6.バイオマス発電と税制について知りたい。
Q7.林業者以外による林地の利用に際しての森林法上の問題点は何か?
Q8.小規模火力発電としての消防法上の規制は?
Q9.海外のバイオマスチップを購入する際の問題点は?
Q10 廃棄物処理法上の問題点は?
◆実務編
第1章 経済性・コスト評価
1.太陽光発電 西川省吾
1.実務概要
2.実務実践
3.まとめ
2.太陽光プラントの長期信頼性 菊池達人
1.はじめに
2.太陽光プラントの長期信頼性を阻害する事象
3.太陽光プラントの長期信頼性向上のための活動
4.潜在する問題点
3.太陽光発電パネルの瑕疵,製造物責任,施工責任及び所有者責任 江口直明
1.はじめに
2.太陽光パネルの製品自体の瑕疵
3.製造物責任
4.施工業者の責任
5.所有者の責任
6.保険の対応
7.まとめ
4.風力発電 斉藤 長
1.実務概要――風力発電の導入・企画
2.実務実践
5.地熱発電 中西繁隆
1.実務概要
2.実務実践
6.中小水力発電 古矢 千吉
1.実務概要
2.実務実践
7.バイオマス発電 菅原 良
1.実務概要
2.実務実践
第2章 手続き・評価・制度
1.系統連系問題の技術的・制度的課題 安田 陽
1.はじめに
2.接続保留問題と接続可能量
3.「接続可能量」の問題点
4.「指定電気事業者」制度のピットフォール
5.VRE出力抑制率の国際比較
6.「連系可能量」と「出力抑制」の今後
2.ファイナンス,PA――制度・金融・実務 馬場史朗
1.再エネファイナンスのための事業性評価のポイント
2.再エネファイナンス実施に向けた検討事項
3.事業プロセスとリスク対応 馬場史朗
1.太陽光発電
2.風力発電
3.中小水力発電
4.リスクマネジメントと評価 寺崎康介
1.はじめに
2.リスクマネジメントの基本的な考え方
3.再生可能エネルギー事業を取り巻くリスク
4.太陽光発電事業における事故・災害リスク
5.風力発電事業における事故・災害リスク
6.まとめ
◆実例編
1.環境モデル都市・飯田を目指して 田中克己
1.はじめに
2.飯田市再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例に基づく「地域公共再生可能エネルギー活用事業」の運用動向
2.南信州おひさまファンド・プロジェクト 谷口 彰
1.はじめに
2.第1号おひさま発電所
3.おひさま発電所プロジェクトの仕組み
4.さんぽちゃんと環境教育
5.おひさまファンドと事業実績
6.まとめ
3.地域主導型再生可能エネルギー推進と地域活性化―うどん県電力 伊藤伸一 十河正信 喜田浩一
1.会社設立
2.操業開始
4.日本初,東京ソーラー屋根台帳―海外事例を交えて 稲垣憲治
1.はじめに
2.東京ソーラー屋根台帳とは
3.開発について
4.運用について
5.利活用・効果について
6.海外のソーラー屋根台帳について
7.まとめ
5.電力の地産地消を目指して―中之条電力 山本政雄
1.はじめに
2.中之条町の概要
3.新電力(Power Producer and Supplier;PPS)立ち上げの背景と経緯
4.電力自由化への対応と課題
6.市民がつくる市民発電所,行政がつくる再生可能エネルギー条例―宝塚すみれ発電 井上保子
1.はじめに
2.さまざまな出会い
3.工事開始
4.チェルノブイリ,そして福島第1原子力発電所の事故
5.資金の集め方――疑似私募債
6.建設地への協力
7.行政との関係
8.条例制定にむけて
9.最初の資金調達問題
10.まとめ
7.再生可能エネルギーと市民ファンド 吉岡 剛
1.はじめに
2.市民ファンドとは
3.日本初の市民風車から始まった市民ファンド
4.市民ファンドの種類と特徴