抗酸化能を有する素材は、食品、医薬品、化粧品、サプリメントなどにその機能を付与し、我々の身近な製品として存在する。
抗酸化素材の代表格であるビタミンCやビタミンEは主に医薬品、食品添加物に利用され、市場規模は安定した推移をみせる一方、葉酸、ビタミンD、ルテイン、アスタキサンチンなどカロテノイドの健康・美容を目的とした市場規模の拡大が著しい。
特に2010年代以降、コラーゲンやヒアルロン酸などのアンチエイジング素材が伸長し、2011年から2013年にかけて100億円を超える市場規模に拡大した。また、2013年には、長寿命遺伝子=サーチュイン遺伝子を活性化させることで注目のレスベラトロール、そして、細胞増殖や分化を促す成長因子をもつプラセンタを含有する食品に対し日本健康・栄養食品協会による規格基準が策定され、大手メーカーが化粧品やサプリメント市場に参入し活性化が期待されている。
本書は、抗酸化能を有する製品開発のヒントに繋がる【開発編】、および、抗酸化素材のメーカー、市場動向が掴める【市場編】の2編で構成されている。
【開発編】では、各素材の抗酸化作用をはじめ応用製品への取り組みまで、そして、抗酸化性測定法、抗酸化能評価について、専門家の方々に詳細にご執筆いただいた。【市場編】では、抗酸化酵素、酵素誘導成分、抗酸化ビタミン、抗酸化成分、合計約50種類の素材の特性、製法、市場動向、さらに、抗酸化能測定機器・試薬メーカーの動向、各メーカーにおける抗酸化素材使用製品の動向、最後には、食品、飲料、サプリメント、化粧品市場を分野別に詳述した。
本書が、抗酸化素材を利用した製品開発に携わる、食品、化粧品、医薬品メーカーの方々の研究一助となれば幸甚である。
2014年5月
シーエムシー出版 編集部
【開発編】
第1章 抗酸化食品素材の開発 (山下栄次)
1 はじめに
2 抗酸化食品素材について
2.1 抗酸化酵素と抗酸化ミネラル
2.2 抗酸化ビタミン
2.3 植物栄養素(フィトケミカル)
3 活性酸素と抗酸化食品素材
3.1 活性酸素について
3.2 活性酸素消去に対する考え方
4 抗酸化食品素材の抗酸化機構
4.1 化学反応による抗酸化作用
4.2 物理的接触による抗酸化作用
5 抗酸化食品素材の開発
5.1 抗酸化食品素材が活性を発現する場
5.2 抗酸化食品素材の体内動態と摂取量
6 おわりに
第2章 抗酸化能評価導入による食品産業への展望 (後藤浩文、高橋有志)
1 はじめに
2 生体内での抗酸化作用
3 抗酸化能の測定手法
4 理化学的な抗酸化評価法
4.1 DPPH法
4.2 ESR法
4.3 ORAC法
5 新たな抗酸化評価法開発への取り組み
6 細胞内抗酸化活性(CAA)
7 食品への抗酸化能表示
第3章 統一的な食品の抗酸化能指標の必要性
―酸素ラジカル吸収能(ORAC)測定法の妥当性確認と今後の抗酸化能研究への展開― (渡辺純、若木学、石川(高野)祐子)
1 はじめに
2 食品の抗酸化能
3 統一的な抗酸化能指標の必要性
4 ORAC法の特徴
5 妥当性の確認されたORAC測定法
6 妥当性の確認された抗酸化能測定法による食品の抗酸化能データの蓄積
7 今後の展望
第4章 抗酸化機能の基準化に向けた取り組み (李昌一)
1 はじめに
2 活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)
2.1 スーパーオキシドアニオンラジカル(O2・-)
2.2 過酸化水素(H2O2)
2.3 ヒドロキシルラジカル(HO・)
2.4 一重項酸素(1O2)
3 酸化ストレスと抗酸化システム
3.1 SOD
3.2 CAT
3.3 GPx
4 ESR法による活性酸素種の検出と抗酸化能評価の実際
5 生体ESR法による酸化ストレス評価と抗酸化能評価の実際
6 おわりに―抗酸化機能の基準化に向けて―
第5章 スパイス・ハーブの抗酸化作用 (菊﨑泰枝)
1 はじめに
2 スパイス・ハーブの脂質に対する抗酸化作用
3 シソ科ハーブの抗酸化作用
3.1 シソ科ハーブの抗酸化成分
3.2 ローズマリー,セージの抗酸化成分
3.3 タイムの抗酸化成分
3.4 オレガノの抗酸化成分
3.5 その他のシソ科ハーブの抗酸化成分
4 フトモモ科スパイスの抗酸化作用
5 ニクズク科スパイスの抗酸化作用
6 ショウガ科スパイスの抗酸化作用
6.1 ショウガの抗酸化成分
6.2 ウコンの抗酸化成分
6.3 その他のショウガ科植物の抗酸化成分
7 その他のスパイス・ハーブの抗酸化作用
8 おわりに
第6章 ビタミン・ミネラルの抗酸化作用 (太田好次、福澤健治)
1 はじめに
2 ビタミンの抗酸化作用
2.1 ビタミンA
2.2 ビタミンB群
2.3 ビタミンC
2.4 ビタミンD
2.5 ビタミンE
3 ミネラルの抗酸化作用
3.1 亜鉛(Zn)
3.2 クロム(別名クロミウム)(Cr)
3.3 セレン(Se)
3.4 鉄(Fe)
3.5 銅(Cu)
3.6 マグネシウム(Mg)
3.7 マンガン(Mn)
第7章 抗酸化カロテノイドの生体利用性と機能
―トマトのリコピンを中心に― (相澤宏一)
1 はじめに
2 カロテノイドの生体利用性
2.1 カロテノイドを含む素材
2.2 カロテノイドの吸収
2.3 カロテノイドの蓄積
2.4 カロテノイドの代謝
3 カロテノイドの機能
3.1 抗酸化作用
3.2 その他の生理作用
4 弊社での研究内容
4.1 リコピンの吸収
4.2 リコピンの抗酸化作用
4.3 リコピンの疾病予防作用
5 まとめ
第8章 レスベラトロールの抗酸化作用 (立藤智基、生田智樹、谷央子)
1 はじめに
1.1 レスベラトロールの起源
1.2 レスベラトロールを含む食材と加工食品
2 レスベラトロールの抗酸化性
2.1 スカベンジャー分子としてのレスベラトロール
2.2 抗酸化活性の増強
2.3 酸化活性の低減
3 レスベラトロールの抗酸化作用による効果
3.1 血管疾患に対するレスベラトロール
3.1.1 脂質酸化におけるレスベラトロールの効果
3.1.2 酸化による血管障害を防御する抗酸化メカニズムによるレスベラトロールの効果
3.1.3 酸化窒素代謝におけるレスベラトロールの効果
3.2 脳血管障害に対するレスベラトロール
3.2.1 レスベラトロールとSIRT1
3.2.2 レスベラトロールとNrf2
3.3 糖尿病に対するレスベラトロール
3.3.1 レスベラトロールとNAD(P)H酸化
3.3.2 レスベラトロールとNF-κB
4 レスベラトロールと酸化マーカー
4.1 糖化ヘモグロビン(HbA1c)
4.2 8-イソプロスタン
5 レスベラトロール誘導体の抗酸化作用
6 レスベラトロールの臨床試験
7 ヒトでのレスベラトロールの体内動態
7.1 レスベラトロールの代謝
7.2 レスベラトロールのバイオアベイラビリティ
7.3 レスベラトロールの血中持続性
8 おわりに
第9章 フェノール性抗酸化物質をシーズとした高機能性分子の開発 (福原潔)
1 はじめに
2 平面形カテキン誘導体の開発
2.1 フェノール性抗酸化物質のラジカル消去機構
2.2 ラジカル消去能の増強を目的とした平面型カテキン誘導体
2.3 塩基性アミノ酸の導入
2.4 平面型カテキン誘導体の可能性
3 癌治療薬を目指して
3.1 カテキン誘導体
3.2 レスベラトロール誘導体
4 アルツハイマー病予防薬を目指して
4.1 カテキン誘導体
4.2 ビタミンE誘導体
5 安全性の高い抗酸化物質を目指して
5.1 メチルレスベラトロール誘導体
5.2 メチルカテキン誘導体
6 おわりに
【市場編】
第1章 抗酸化素材の市場概況
1 概要
2 市場動向
第2章 抗酸化成分の特性・製法・市場動向
1 抗酸化酵素
1.1 スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)
1.2 カタラーゼ
1.3 グルタチオンペルオキシダーゼ
1.4 グルタチオントランスフェラーゼ(GST,グルタチオンS転移酵素)
2 酵素誘導成分
3 抗酸化ビタミン
3.1 水溶性ビタミン
3.1.1 L-アスコルビン酸(ビタミンC)
3.2 脂溶性ビタミン
3.2.1 レチノイド(ビタミンA)
3.2.2 ビタミンE
4 抗酸化成分
4.1 フェノール性成分
4.1.1 フラボノイド
4.1.2 フラボノイド以外のポリフェノール
4.2 レスベラトロール
4.3 カロテノイド
4.3.1 カロテン類
4.3.2 キサントフィル類
4.4 タンニン(酸)
4.5 イソチオシアネート
4.5.1 スルフォラファン
4.6 インドール化合物
4.7 アミノカルボニル反応生成物
4.8 抗酸化ペプチド
4.8.1 大豆ペプチド
4.8.2 魚由来ペプチド(サーディンペプチド,魚肉ペプチド)
4.8.3 牛乳由来ペプチド(ミルクペプチド,ホエイペプチド)
4.8.4 イミダゾールジペプチド
4.8.5 グルタチオン
4.8.6 コラーゲンペプチド
4.9 植物ステロール(フィトステロール)
4.10 その他の抗酸化成分
4.10.1 フコイダン
4.10.2 β-グルカン
4.10.3 ペクチン
5 抗酸化協奏成分
5.1 キレート性化合物
5.1.1 クエン酸
5.1.2 ヒスチジン
5.1.3 フィチン酸
5.1.4 アルギン酸
5.2 XYZ系のZ成分
5.2.1 大豆サポニン
5.2.2 アルデヒド
5.2.3 金属タンパク質
5.2.4 核酸
5.2.5 ビタミンB群
第3章 抗酸化能の測定機器・試薬メーカー
1 食品分析開発センター(SUNATEC)
2 和光純薬工業
3 日研ザイル(日本老化制御研究所)
4 同仁化学研究所
5 日立アロカメディカル
6 アトー
7 常磐植物化学研究所
8 ウイスマー
9 バイオラジカル研究所
10 エーセル
第4章 主要メーカーの動向
1 機能性素材メーカー
1.1 池田糖化工業
1.2 丸善製薬
1.3 一丸ファルコス
1.4 オリザ油化
1.5 BASFジャパン
1.6 DSMニュートリショナル・プロダクツ
1.7 富士化学工業
1.8 ニチレイバイオサイエンス
1.9 太陽化学
1.10 日油
1.11 林原
1.12 片倉チッカリン
1.13 築野食品工業
1.14 東海物産
2 食品/健康食品メーカー
2.1 ヤクルト本社
2.2 キッコーマン
2.3 サントリーウエルネス
2.4 アサヒグループホールディングス
2.5 日清オイリオグループ
2.6 山田養蜂場本社
2.7 カゴメ
3 化粧品メーカー
3.1 ポーラ化成工業
3.2 ニナファームジャポン
3.3 資生堂
3.4 ノエビア
3.5 日本ロレアル
3.6 コーセー
3.7 カネボウ化粧品
3.8 日本メナード化粧品
4 その他メーカー
4.1 花王
4.2 富士フイルム
4.3 DSP五協フード&ケミカル
4.4 ライオン
4.5 高研
4.6 タカラバイオ
4.7 小林製薬
第5章 応用市場動向
1 食品市場
2 飲料市場
3 サプリメント市場
4 化粧品市場市場/化粧品市場市場