鳩山政権が打ち出した「2020年までにCO2を1990年比で25%削減する」という大きな目標に向かって,電気自動車に対する期待が高まっている。
100年に一度の経済不況対策,さらに各国のグリーンニューディール政策を強力に推進している状況において,特に自動車産業への対応が急務と捉えられている。
電気自動車の構造が単純ということで異業種からの参入も容易であり,それゆえ自動車産業の構造そのものに大きな変革をもたらす。例えば,中国の農村部で「電気自動車ブーム」が起きており,今まで自動車と縁のなかった層が新たな市場として活気づいている。新興メーカーの中には,ヨーロッパに進出するなど,自動車メーカーと市場争いを繰り広げるところも出てきた。
電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池は自動車メーカーから要求されているバッテリー性能・機能の技術課題のハードルが高く,エネルギー密度や入出力密度の向上などの解決しなければならない課題がある。ただ,現状ではリチウムイオン電池が本命視されており,いよいよ自動車に搭載される見通しが立ってきた。
また,電池の技術革新とあいまって自宅や外出先で簡単に充電を行えるようにするためのインフラ整備が必要不可欠である。国内では,電気自動車の充電インフラ整備として,ガソリンスタンド,コンビニエンスストア,スーパーマーケットやショッピングセンターなどがあり,自動車や電機業界,電力事業会社,流通業界などの異業種の協力が期待されている。
電気自動車の普及には,電気自動車の量産体制が整うこと,購入したいというユーザーが存在すること,ガソリンスタンドに相当する充電のためのインフラが整備されることの3条件が必須である。その中で,国内の自治体の中で,突出して積極的に電気自動車の普及策を打ち出す神奈川県が,充電インフラ整備の支援策や電気自動車関連のさまざまな実証実験,共同プロジェクトが注目されている。
本書は,経済対策の一環であるエコカー減税と各自動車メーカーのこれまでの対応,国内外の自動車メーカーの動向と戦略,電池メーカーの動向,非接触型給電システムの開発動向をまとめた。これから電気自動車に関連する研究開発及びバッテリーに関連する方々に本書が情報収集の一助となれば幸いである。
(「はじめに」より)
2010年3月 シーエムシー出版 編集部
第1章 経済対策
1. エコカー減税
2. 自民党政権時の購入補助策
3. 民主党政権はエコカー減税より暫定税率廃止重視
4. 減税と買い替え推進による効果
5. 各自動車メーカーの対応
第2章 国家プロジェクト
1. 国内の国家プロジェクト動向
1.1 NEDO「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」
1.2 NEDO「次世代自動車用高性能蓄電池システム技術開発」
2. 米国の国家プロジェクト動向
2.1 自動車技術プログラム(VT)
2.2 PNGV
2.3 Freedom Car・車両技術プログラム
3. 欧州における国家プロジェクト
3.1 欧州における低公害型自動車開発の経緯
3.2 欧州における2次電池開発国家的プロジェクト
第3章 各種低公害車の概要と市場予測
1. ハイブリッド自動車
1.1 製品概要
1.2 市場規模推移・予測
1.2.1 日本市場
1.2.2 グローバル市場
2. 電気自動車
2.1 製品概要
2.2 市場規模推移・予測
2.2.1 日本市場
2.2.2 グローバル市場
3. 燃料電池自動車
3.1 製品概要
3.2 市場規模推移・予測
3.2.1 日本市場
3.2.2 グローバル市場
第4章 自動車メーカーの動向と戦略
1. トヨタ自動車
1.1 事業概要
1.2 事業動向
2. 本田技研工業
2.1 事業概要
2.2 事業動向
3. 日産自動車
3.1 事業概要
3.2 事業動向
4. 三菱自動車工業
4.1 事業概要
4.2 事業動向
5. 富士重工業
5.1 事業概要
5.2 事業動向
6. ダイハツ工業
6.1 事業概要
6.2 事業動向
7. ゼネラル・モーターズ(GM)
7.1 事業概要
7.2 事業動向
8. フォード・モーター・カンパニー
8.1 事業概要
8.2 事業動向
9. クライスラー
9.1 事業概要
10. ダイムラー
10.1 事業概要
10.2 事業動向
11. フォルクスワーゲン
11.1 事業概要
11.2 事業動向
12. PSA・プジョーシトロエン
12.1 事業概要
12.2 事業動向
13. その他
第5章 電池生産動向
1. リチウムイオン電池
1.1 リチウムイオン電池/正極材
1.1.1 製品概要
1.1.2 市場動向・価格動向
1.1.3 メーカー動向
1.1.4 用途動向
1.2 リチウムイオン電池/負極材
1.2.1 製品概要
1.2.2 市場動向・価格動向
1.2.3 メーカー動向
1.2.4 用途動向
1.3 リチウムイオン電池/電解液
1.3.1 製品概要
1.3.2 市場動向・価格動向
1.3.3 メーカー動向
1.3.4 用途動向
1.4 リチウムイオン電池/セパレータ
1.4.1 製品概要
1.4.2 市場動向・価格動向
1.4.3 メーカー動向
1.4.4 用途動向
2. ニッケル水素電池
2.1 ニッケル水素電池/正極材
2.1.1 製品概要
2.1.2 市場動向・価格動向
2.1.3 メーカー動向
2.1.4 用途動向
2.2 ニッケル水素電池/負極材
2.2.1 製品概要
2.2.2 市場動向・価格動向
2.2.3 メーカー動向
2.2.4 用途動向
2.3 ニッケル水素電池/電解液
3. 電気二重層キャパシタ
4. 鉛電池
4.1 製品概要
4.2 市場動向・価格動向
4.3 メーカー動向
4.4 用途動向
5. ニカド電池
5.1 製品概要
5.2 市場動向・価格動向
5.3 メーカー動向
5.4 用途動向
6. 燃料電池
6.1 製品概要
6.2 市場動向・価格動向
6.3 メーカー動向
6.4 用途動向
第6章 電池主要メーカー動向
1. 三洋電機
1.1 電池事業の概要
1.2 二次電池の事業動向
2. エナジー社
2.1 電池事業の概要
2.2 二次電池の事業動向
3. ソニー
3.1 電池事業の概要
3.2 二次電池の事業動向
4. ジーエス・ユアサコーポレーション
4.1 電池事業の概要
4.2 二次電池の事業動向
5. NECトーキン
5.1 電池事業の概要
5.2 二次電池の事業動向
6. 日立グループ
6.1 電池事業の概要
6.2 二次電池の事業動向
7. 東芝グループ
7.1 電池事業の概要
7.2 二次電池の事業動向
8. 古河電池
8.1 電池事業の概要
8.2 二次電池の事業動向
9. 中国BYD(比亜迪股分有限公司)
9.1 電池事業の概要
9.2 二次電池の事業動向
10. 韓国サムスンSDI
10.1 電池事業の概要
10,2 二次電池の事業動向
11. LG化学
11.1 電池事業の概要
11.2 二次電池の事業動向
12. その他の企業の動向
第7章 非接触型給電システムの開発動向
1. 電磁誘導型
1.1 技術概要
1.2 メーカー動向
1.2.1 昭和飛行機工業
1.2.2 Conductix-Wampfler
2. 電波受信型
2.1 技術概要
2.2 メーカー動向
2.2.1 三菱重工業
3. 磁気共鳴型
3.1 技術概要
3.2 メーカー動向
3.2.1 長野日本無線
3.2.2 WiTricity Corporation
3.2.3 インテル・コーポレーション
3.2.4 クアルコム
第8章 日米欧環境対策規制とその対策―自動車をめぐる環境対策の現状―
1. 日本における環境対策動向
2. 米国における環境対策動向
3. 欧州における環境対策動向
第9章 電気自動車普及の取り組み事例(地方自治体を中心に)
電気自動車,リチウムイオン電池,ニッケル水素電池,非接触型給電,書籍