地球上のすべての生命は、水によって育まれてきた。水はすべての源であり、生物は水中に生存し、あるいは体内に水を満たすことで生命活動を維持している。水は人や動植物が生きていく上で欠かせないものであり、工業と農業にとっては貴重な天然資源である。
地球上に存在する水の量は、およそ14億km3、そのうちの97.5%が海水で占められ、淡水は残りの2.5%。しかもこの淡水のほとんどは、南極と北極など極地の氷や氷河であり、実際に使用できる河川水などの淡水の量は、0.8%という少量に過ぎない。さらに0.8%の淡水のほとんどが深い地下水であり、人の利用が容易な河川水や湖沼水となると、地球上の水のわずか0.01%(約10万km3)になる。全量を風呂桶1杯にたとえると、両手ですくえるほどの量に過ぎない。そして地球上の淡水の量は一定であり、増えることはない。
一方、地球温暖化などの気候変動による海面上昇や局地的な洪水、干ばつ・渇水の発生、砂漠化の進行、人為的には開発途上国・新興国の急速な工業化や都市化、人口増加の影響から世界的な水不足と水質悪化・水源汚染が進んでいる。近年の原油価格高騰はあるものの「20世紀は石油をめぐっての争いだったが、21世紀の国際紛争は水をめぐる争いになる。世界の貧困は水に起因する」と言われだした。水は世界のすべての地域に等しく散らばっているわけではない。偏在する淡水をめぐって、豊かな水資源をもつ国と、もたない国の間で水の公平な分配がより難しくなる。
「水問題」の目標は、世界のどこでも安全で安心な水の安定的な供給の実現である。
水ビジネスの市場は現在約60兆円規模だが、途上国の経済発展と都市化に伴う水需要の急増で、2025年には100兆円に拡大するといわれている。
弊社では2010年と2012年に「水処理・水浄化・水ビジネスの市場」を発刊、幸いに好評をいただいてきた。本書では、水ビジネス市場の構造、世界の水環境、水浄化ビジネス、世界の水ビジネス、水処理・水浄化装置・機器、水処理薬剤・材料の市場、水ビジネスの今後、の7つの観点からまとめた。本書を水産業・水関連ビジネスに携わる方々の情報収集の一助としてご購読をお勧めします。
第1章 水ビジネスと水処理材料市場の構造
1 淡水量の有限性
2 21世紀は水の世紀
3 水の不足量の予測(2030年時点)
4 水ビジネスの目標
5 日本の水処理技術と水道事業
6 日本の水消費量と「水」輸入大国・日本
7 水処理技術と処理剤・材料市場と企業
8 水利用ビジネスの市場
8.1 海洋深層水
8.1.1 概要
8.1.2 海洋深層水の産業利用と市場
8.1.3 海洋深層水と放射性物質の影響
8.2 ミネラルウォーター
8.2.1 概要
8.2.2 ミネラルウォーターの市場動向
第2章 世界の水環境と市場
1 世界の水環境と水問題
1.1 水資源の循環性という特性
1.2 水資源の偏在性と対応策
1.3 国際河川と水問題
1.3.1 ナイル川流域
1.3.2 ヨルダン川,インダス川,メコン川,漢江など
1.4 気候変動と水環境
2 水問題と企業の社会的責任(CSR)
2.1 P&Gの家庭用浄水剤
2.2 ボルヴィックの「1L for 10L」
2.3 ユニセフのプログラム
2.4 水問題とジェンダー保護
2.5 日本ポリグルの簡易浄水装置
3 世界の水ビジネス市場展望(2025年)
4 日本の水ビジネスの課題
第3章 水処理ビジネスの現状
1 わが国の水ビジネスと市場
1.1 治水・利水・造水と水道ビジネス
1.2 水インフラビジネスから新たなビジネスへ
2 上下水道の民営化と市場
2.1 実施例(PPP,PFIとVFM評価)
2.2 民営化の諸問題
3 新設市場から補修市場へ
3.1 既設市場と耐用年数,陥没事故
3.2 修復・更新市場と配管補修技術
4 水処理ビジネスの団体・機構・組織
4.1 政治・政党系の団体
4.1.1 自民党,水の安全保障研究会(2007年)
4.1.2 日本水フォーラム(2003年)
4.1.3 チーム水・日本(2009年),水の安全保障戦略機構(2009年)
4.2 水関連省庁系の団体
4.2.1 海外水インフラPPP協議会(国土・厚労・経産,2010年)
4.3 産業界系の団体
4.3.1 産業競争力懇談会(COCN 2006年)
4.3.2 (一般社団法人)海外水循環システム協議会(GWRA,2012年,民間)
4.3.3 NEDO・ウォータープラザ(北九州・周南,2010年)と海外水循環ソリューション技術研究組合(2010年, GWSTA)
5 水インフラ復旧と東日本大震災
5.1 水インフラの震災状況と復旧
5.2 水インフラの耐震化
6 水処理ビジネスと放射能汚染
6.1 新事業としての除染作業と除染技術
7 外国資本水資源買収と水資源
7.1 ミネラルウォーター産業としての水資源問題
7.2 外国資本による水源買収
8 水ビジネスと世界
8.1 水メジャーと水ビジネス
8.2 水メジャーの広範な事業
8.3 台頭する現地企業・国策企業と水メジャーの競合
9 シンガポール,韓国の国策動向
9.1 シンガポールの水ビジネス戦略
9.2 韓国の水ビジネス戦略
10 わが国の自治体・商社による新規参入動向
10.1 東京都や大阪市の参入動向
10.2 総合商社の海外水ビジネス
(1) 三菱商事
(2) 三井物産
(3) 丸紅,など
11 水の国際会議と水ビジネス国際標準化の動向
12 バラスト水の処理と処理技術
第4章 中国と世界の水ビジネスの現状
1 中国の水市場
1.1 中国の上下水道市場
1.2 中国の水処理ビジネスの市場規模
1.3 中国市場と水メジャー, 中国企業
1.4 中国「南水北調」運河プロジェクト
2 世界の地域別水市場
2.1 世界各国の水ビジネス市場規模
2.2 2018年の水ビジネス市場規模
第5章 水処理装置・設備の市場と技術
1 水処理装置・設備
1.1 水処理装置・設備と原水
1.2 水処理の種類
1.3 水処理装置・設備の運用形態
2 浄水(上水道・地下水)ビジネスと装置・設備
2.1 上水道の種類
2.2 上水道の装置構成と水質改善
2.3 上水道のメンテナンス市場
2.4 原水としての地下水利用
3 下水道ビジネスと装置・設備
3.1 下水道の現状
3.2 下水道の処理方法と処理技術
3.3 下水道の装置・設備の市場・企業動向
4 再生水ビジネスと装置・設備
4.1 新たなビジネス水資源としての再生水
4.2 水処理方法(再利用方式)と装置
4.3 雨水利用と再生水
4.4 産業分野の水再利用
4.5 国内の下水再利用と市場
4.6 海外の下水再利用と市場
5 海水淡水化装置と市場
5.1 海水淡水化の現状
5.2 海水淡水化装置の市場動向
6 産業用水処理装置と市場
6.1 産業用水の現状
6.2 工業的純水の製造と処理方法・装置
6.3 産業用水処理装置の市場・企業動向
7 浄化槽と市場
7.1 浄化槽処理の現状
7.2 浄化槽の処理法と種類
7.3 浄化槽の市場・企業動向
8 浄水器(家庭用・業務用)と市場
8.1 浄水器の種類と現状
8.2 浄水器の機能と分類
8.3 家庭用浄水器の処理方式と製品形態
8.4 浄水器の市場動向
第6章 水処理薬品・材料の市場
---<6章各節の共通項目>---------------------------------
(1) 概要
(2) 市場動向
(需要推移,輸出・輸入動向,代替動向,用途動向,需要予測,価格)
(3) 企業・技術動向
(参入企業,流通動向,市場規模,生産設備,メーカーシェア,技術動向)
---------------------------------------------------------
1 水処理薬品の全容
2 水処理薬品・薬剤
2.1 けいそう(珪藻)土
2.2 凝集剤
2.2.1 金属・無機系凝集剤
(1) 硫酸アルミニウム(硫酸バンド)
(2) ポリ塩化アルミニウム(PAC)
(3) ポリ硫酸第二鉄(「ポリテツ」)
(4) ポリシリカ鉄(PSI:Polysilicato-Iron)
2.2.2 有機系高分子凝集剤
① 概要
② 市場規模
(1) ポリアクリルアミド(ポリアクリルアマイド)
(2) その他の高分子凝集剤
2.3 第4級アンモニウム塩
2.4 酸化剤・還元剤
2.4.1 塩素系酸化剤
(1) 塩素ガス・液体塩素
(2) 次亜塩素酸ナトリウム
(3) 二酸化塩素
(4) 次亜塩素酸カルシウム(さらし粉・高度さらし粉)
(5) 塩素化イソシアヌル酸塩
(6) クロラミン
2.4.2 酸素系酸化剤
(1) オゾン
(2) 過酸化水素
2.4.3 還元剤
(1) ヒドラジン(ヒドラジン水和物・水加ヒドラジン)
2.5 その他の水処理薬品
(1) キレート剤
(2) 消泡剤
① 概要
1) シリコーンオイル
2) シリコーンオイル2次製品
3) シリコーン消泡剤
②市場動向
1) 需要推移
2) 輸出・輸入動向
3) 用途動向
4) 需要予測
③ 企業動向
1) 参入企業
2) 流通動向
2.6. 微生物制御・スライムコントロール剤
2.6.1 過酢酸
2.6.2 イソチアゾロン系化合物
2.6.3 2.2-ジブロモ-2-シアノアセトアミド(DBNPA)
2.6.4 その他
2.7 水処理薬品ブレンド
2.8 光触媒
3 水処理用の機能材・材料
3.1 イオン交換体(イオン交換膜・イオン交換樹脂・イオン交換繊維)
3.1.1 イオン交換膜
3.1.2 イオン交換樹脂
3.2 活性炭
3.3 水処理用分離膜・ろ過膜
3.3.1 MF膜 (Micro Filtration Membrane:精密ろ過膜)
3.3.2 UF膜 (Ultra Filtration Membrane:限外ろ過膜)
3.3.3 NF膜 (Nano Filtration Membrane:ナノろ過膜)
3.3.4 RO膜 (Reverse Osmosis Membrane:逆浸透膜)
3.3.5 分離膜・ろ過膜の企業動向
3.3.6 分離膜・ろ過膜の技術・開発動向
第7章 水処理・浄化・水ビジネスの今後
1 開発方向と開発技術
1.1 開発方向と中国市場
1.2 汚泥処理技術と中国市場
1.3 汚泥からのリン資源回収技術
1.4 産業排水からの資源回収技術
1.5 膜利用など省エネルギー技術
1.6 濃縮海水の処理技術
1.7 NEDOの水処理プロジェクト
1.8 JST-CRESTの研究プロジェクト
1.9 ミドリムシによる下水中の窒素リン除去技術
1.10 バイオアッセイと全排水毒性評価
2 水処理企業
2.1 日立グループ
2.2 エンジニアリング会社
2.3 総合商社
2.4 膜メーカー
(1)日東電工
(2)東レ
(3)旭化成ケミカルズ
(4)三菱レイヨン
(5)日本ガイシ
(6)その他のメーカーと企業連合
(7)水処理薬品・材料メーカー
参考資料 (ホームページURL)