不織布とは文字通り「織らない布」である。多孔質である不織布は、通気性・ろ過性・保温性などの特性を持つ。多様な原料や製法の組み合わせによって、用途や目的に応じて様々な機能を付加することができる。その不織布の需要が好調である。
国内における不織布の需要はリーマン・ショック時に落ち込んだがその後徐々に回復、経済産業省の調査によると、2015年の不織布の国内生産量は過去最高となる34万1、954トンとなった。2016年も33万9、616トンとほぼ横ばいで推移し堅調を維持している。
不織布が使われる用途は、衣料・インテリア、医療・衛生、土木・建築、自動車、農業、生活資材、産業資材など広範にわたる。近年は紙おむつなど医療・衛生用途での需要が世界的にも拡大、市場を牽引してきた。また、2016年は自動車向けの生産量が5万1、675トンで依然好調である。これは内装材や吸音材、外気吸入フィルターなどへの採用増が要因と考えられる。
このように市場が拡大し続ける不織布について、技術動向と市場動向の全体を把握できる書籍をまとめたいという考えから本書を企画した。
【技術編】では、不織布の高機能化や製造技術、コスメ用途や農業用途そしてバイオメディカル材料などへの展開、ナノファイバー不織布の開発と水処理への応用、生分解性を有するポリ乳酸繊維・不織布の実用化動向、不織布製造設備の最新動向、不織布の触感などの物性測定について、各分野の代表的な専門家の方々に解説して頂いた。
【市場編】では、市場動向(製法別生産量と動向、需給動向、海外展開)、用途分野別動向(衣料・インテリア、医療・衛生、土木・建築、自動車、農業、生活資材、産業資材)、メーカー動向(50社)などに関して、独自取材に基づき、図表・写真を多用して最新のマーケット情報を分かりやすく掲載している。
不織布の原反・加工・機械メーカーや商社はもとより、繊維、医療、衛生用品、化粧品、農業資材、建築資材、自動車、エレクトロニクスなど、広く不織布に関心をお持ちの方々の情報収集の一助となれば幸いである。
シーエムシー出版 編集部
【技術編】
第1章 不織布の高機能化・生産技術と用途展開
1 はじめに
2 不織布の定義
3 不織布業界の現状
4 不織布用繊維
5 不織布製造方法
5.1 ウェブの形成方法
5.2 ウェブの接着(結合)方法
6 不織布の技術開発動向
6.1 不織布の高機能化
6.2 最近の不織布製造技術の動向
7 不織布の用途開発動向
8 おわりに
第2章 コスメ用不織布の開発動向
1 はじめに
2 コスメ用不織布の歴史
3 コスメ用不織布のマーケットと要求特性
3.1 化粧品市場
3.2 オプショナルケアの市場
3.3 フェイスマスクの市場
3.4 要求性能
3.5 制汗シートの市場と要求性能
3.6 クレンジングシートの市場と要求性能
4 今後の展望
5 おわりに
第3章 農業用不織布資材の効果と用途の動向
1 はじめに
2 農業用資材としての不織布
2.1 温室ハウス用カーテン資材
2.2 べたがけ資材
2.3 育苗用下敷き資材
2.4 底面給水保水マット
2.5 透水・防根シート
3 農業用途資材を取り巻く環境とニーズ
4 おわりに
第4章 電界紡糸不織布のバイオメディカル材料への応用
1 はじめに
2 電界紡糸
3 バイオ系高分子の電界紡糸
4 電界紡糸不織布の生分解性評価
5 ドライスピニング
6 バイオマテリアルへの応用例
7 おわりに
第5章 エレクトロバブルスピニング法とナノファイバー複合不織布
1 はじめに
2 EBS法
2.1 紡糸法
2.2 無加圧接着法による複合化
3 ナノファイバー複合不織布
3.1 湿式不織布との比較
3.2 セラミックスとの複合化
3.3 高保液性ナノファイバー複合不織布
3.4 バクテリア捕集効率と圧力損失
4 おわりに
第6章 高度水処理のためのナノファイバー不織布フィルターの開発
1 はじめに
2 濾過処理への応用
2.1 使用した濾過フィルター
2.2 水透過および濾過試験方法
2.3 水透過性能の評価
2.4 粒子捕捉性能の評価
2.5 不織布の調製条件の影響
2.6 基本性能のまとめと展望
3 吸着処理への応用
3.1 タンパク質
3.2 重金属(銅,鉛,ニッケルなど)
3.3 六価クロム
3.4 金
3.5 セシウム
3.6 その他
第7章 ポリ乳酸繊維・不織布の実用化動向と今後の展望
1 はじめに
2 PLA繊維・不織布の分類
3 PLA繊維の基本特性…PET繊維との比較
3.1 糸質特性
3.2 環境負荷特性
3.3 安全性と食品衛生性
4 PLA繊維・不織布の有する高機能性
4.1 生分解性…耐久性との両立
4.2 抗菌・防黴性…優れた安全・衛生性
4.3 防炎・難燃性…燃え広がり難い自己消火性
4.4 耐光・耐候性…屋外暴露環境下における耐久性
4.5 吸・放湿特性…衣服または住宅内環境における快適性
5 PLA繊維・不織布の用途分野
5.1 農林・園芸・土木資材分野
5.2 食品・生活衛生・医療分野
5.3 インテリア・寝具・生活雑貨用途
5.4 新規用途
6 今後の展望
第8章 不織布製造設備の最近の動向
1 はじめに
2 Diloグループ製造機械
2.1 Dilo Spinnbau/新型カード機
2.2 DI-LOOM特殊ニードル機
2.3 新たな市場への取組
2.4 新商品【Dilo HyperTex】
2.5 HyperTex
3 CAMPENエアレイド加工装置
3.1 エアレイドとは
3.2 エアレイドプロセス
3.3 新しい生分解性ワイプスの基盤となるエアレイド
3.4 エアレイドの歴史―ワイプスは使い捨てに―
3.5 エアレイドとスパンレースプロセスの開発
3.6 CAMPEN Machineryについて
第9章 不織布の物性測定
1 不織布の構造と性質
2 不織布の試験方法
2.1 厚さ(ISO法)と重さ(ISO法)
2.2 引張強さ及び伸び率(ISO法)
2.3 引裂強さ(JIS法及びISO法)
2.4 破裂強さ(JIS法)
2.5 摩耗強さ(JIS法)
2.6 剛軟度(JIS法及びISO法)
2.7 通気性(JIS法)
2.8 吸水性(JIS法)
2.9 寸法変化率,燃焼性,遮光性及び透光性,耐光堅ろう度,圧縮率及び圧縮弾性率(JIS法)
2.10 その他
3 不織布の触感評価
3.1 触感の主観評価
3.2 布の触感の客観的評価に用いられる物理特性
3.3 客観評価式
【市場編】
第1章 不織布の市場動向
1 不織布の製法別生産量と動向
1.1 ケミカルボンド
1.2 サーマルボンド
1.3 ニードルパンチ
1.4 スパンレース
1.5 スパンボンド/メルトブロー
1.6 湿式
1.7 その他
2 不織布の需給動向
2.1 生産量
2.2 輸出量
2.3 輸入量
2.4 国内需要量
2.5 国産原反,輸入原反の需要量の推移
2.6 輸入動向
3 海外展開
3.1 不織布メーカーの海外進出動向
3.2 不織布メーカーの海外生産動向
第2章 用途分野別動向
1 はじめに
2 衣料・インテリア分野
2.1 衣料・インテリア用不織布の種類と特性,用途,市場規模
2.2 各種製品動向
3 医療・衛生分野
3.1 医療・衛生用不織布の種類と特性,用途,市場規模
3.2 各種製品動向
4 土木・建築分野
4.1 土木・建築用不織布の種類と特性,用途,市場規模
4.2 各種製品動向
5 自動車分野
5.1 自動車用不織布の種類と特性,用途,市場規模
5.2 各種製品動向
6 農業分野
6.1 農業用不織布の種類と特性,用途,市場規模
6.2 各種製品動向
7 生活資材分野
7.1 生活資材用不織布の種類と特性,用途,市場規模
7.2 各種製品動向
8 産業資材分野
8.1 産業資材用不織布の種類と特性,用途,市場規模
8.2 各種製品動向
第3章 不織布のメーカー動向(各項目共通事項:概要,製品動向,企業動向)
1 旭化成
2 阿波製紙
3 アンビック
4 池田紙業
5 王子キノクロス
6 オーツカ
7 オーミケンシ
8 金井重要工業
9 金星製紙
10 倉敷繊維加工
11 クラレクラフレックス
12 呉羽テック
13 KBセーレン
14 サンケミカル
15 三昭紙業
16 JX ANCI
17 JNC
18 シンワ
19 スリーエムジャパン
20 ダイニック
21 ダイワボウポリテック
22 髙安
23 田中
24 タピルス
25 ツジトミ
26 デュポン
27 東洋クッション
28 東洋紡
29 東レ
30 トーア紡マテリアル
31 三澤繊維
32 西川ローズ
33 日清紡テキスタイル
34 ニッポン高度紙工業
35 日本バイリーン
36 ハビックス
37 廣瀬製紙
38 フジコー
39 フタムラ化学
40 前田工繊
41 丸三産業
42 三木特種製紙
43 三井化学
44 三菱製紙
45 三菱ケミカル
46 ユウホウ
47 ユニセル
48 ユニチカ
49 ユニ・チャーム
50 レンゴー・ノンウーブン・プロダクツ