紀ノ岡正博 大阪大学
江崎禎英 経済産業省
梅澤明弘 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
飛田護邦 厚生労働省
尾山和信 (独)医薬品医療機器総合機構
佐藤大作 (独)医薬品医療機器総合機構
古江-楠田美保 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
菊地鉄太郎 東京女子医科大学
清水達也 東京女子医科大学
佐々木次雄 武蔵野大学
福田雅和 和光純薬工業(株)
新井華子 和光純薬工業(株)
藁科雅岐 和光純薬工業(株)
上村光宏 和光純薬工業(株)
竹田康弘 和光純薬工業(株)
松田博行 藤森工業(株)
服部秀志 大日本印刷(株)
村岡恵 大日本印刷(株)
土屋勝則 大日本印刷(株)
青山朋樹 京都大学
仙石慎太郎 東京工業大学
吉田信介 京都大学iPS細胞研究所附属細胞調製施設
一阪朋子 京都大学iPS細胞研究所附属細胞調製施設
建田幸子 京都大学iPS細胞研究所附属細胞調製施設
金子新 京都大学iPS細胞研究所;京都大学iPS細胞研究所附属細胞調製施設
井家益和 (株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
豊田恵利子 東海大学
佐藤正人 東海大学
毛利善一 JCRファーマ(株)
泉謙道 (株)メディネット
佐藤陽治 国立医薬品食品衛生研究所
清水則夫 東京医科歯科大学
外丸靖浩 東京医科歯科大学
渡邊健 東京医科歯科大学
森尾友宏 東京医科歯科大学
齋藤充弘 大阪大学;大阪大学医学部附属病院
岡田潔 大阪大学医学部附属病院
江副幸子 大阪大学医学部附属病院
再生医療や細胞治療において、平成26年11月に2つの法律(「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(新法)」「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」)が施行に至った。一般に、新法は、安全性を担保した医療行為に対して有効性検証する臨床研究を促進し、より多くの経験を積むことができる。その際、医師が外部の細胞培養加工事業者へ細胞培養加工を委託することが可能となり、培養加工の専門化による安全性向上が見込まれる。さらに、臨床研究での経験を切れ目なく治験することで、薬機法においては、有効性を証明し、再生医療等製品の製造承認を生み出すことが期待される。特に、薬機法においては、均質でない再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められれば、特別に早期に条件および期限を付して製造販売承認を得ること(早期承認制度)が記され、迅速な承認・展開が見込まれ、必要な最先端の再生医療等技術が本邦で受けられる社会の実現につながると考えられる。今後、再生医療等の本格的な実現には、より複雑で多様化する細胞培養加工や医療行為に対し、適切な管理技術や運用指針ならびに人材育成や医療全体への支援が不可欠である。いわゆる再生医療における「コトづくり」には、医学、工学、薬学などの学際領域、各省庁、そして産業界が連携し、3つの要素「モノづくり」「ルールづくり」「ヒトづくり」を一体化して具現化することで実現できると思われる。
本書では、再生医療におけるコトづくりを実現するための読者への指南書として、産官学の多岐にわたる方のご尽力を賜り、モノづくり、ルールづくり、ヒトづくりの観点で、産業化施策、規制、培養加工技術、再生医療・細胞治療技術、品質評価、診療、保険制度、教育訓練を多岐に渡って紹介し、コトづくりの実現に向けた知識習得だけではなく、概念構築の一助としてご活用いただければと願う。
第1章 関連三法成立による再生医療産業化への期待 (江崎禎英)
1 新たな制度のスタート
2 法律改正の経緯と意義
2.1 議員立法の成立
2.2 薬事法改正の意義
2.3 新法(再生医療等安全性確保法)制定の意義
2.4 新法に期待されるもう一つの意義
3 ダブルトラックの意義と課題
3.1 両法における安全性基準等の整合性の確保
4 再生医療産業化へのプロセス
5 再生医療を支える周辺産業
5.1 海外依存からの脱却
5.2 周辺産業発展に向けた取り組み
5.3 国際標準化の推進
6 期待される日本企業の対応
7 再生医療の発展に向けて
第2章 再生医療イニシアチブ (梅澤明弘)
1 はじめに
2 再生医療等安全性確保法における細胞製剤
3 医薬品医療機器等法における細胞製剤
4 特定細胞加工物製造に関する文書の雛形
5 再生医療等製品に係るGCTP省令
6 バリデーションとベリフィケーションの意味
7 開発段階における保証レベル
8 造腫瘍性試験について
9 細胞製剤投与技術は製品の品質と同じくらい重要と考える
10 造血細胞移植に学ぶこと
11 おわりに
第3章 法改正による細胞培養事業の在り方
1 再生医療等安全性確保法 (飛田護邦)
1.1 はじめに
1.2 再生医療等安全性確保法の概要
1.3 再生医療等安全性確保法下での細胞培養加工について
1.4 さいごに
2 医薬品医療機器法(改正薬事法) (尾山和信, 佐藤大作)
2.1 薬事法改正の経緯
2.2 医薬品医療機器法の概要
2.3 細胞培養の品質管理の課題
2.3.1 再生医療等製品の品質管理上における基本の考え方
2.3.2 製造管理および品質管理における課題
2.3.3 品質リスクマネジメントの考え方
2.3.4 製品ライフサイクルを見据えた管理戦略への対応
2.3.5 ベリフィケーションによる品質確保のアプローチ
2.3.6 再生医療安全性確保法の枠組みにおける品質管理の本質
2.4 おわりに
第4章 細胞培養技術
1 細胞培養操作 (古江‒楠田美保)
1.1 はじめに
1.2 作業フローの作成と記録
1.2.1 基本の考え方
1.2.2 実際
1.3 ベンチのレイアウト
1.3.1 基本の考え方
1.3.2 実際
1.4 試薬や培地の調整
1.4.1 基本の考え方
1.4.2 実際
1.5 ピペット操作
1.5.1 基本の考え方
1.5.2 実際
1.6 まとめ
2 組織工学 (菊地鉄太郎, 清水達也)
2.1 はじめに
2.2 組織工学と三次元組織
2.3 細胞シート
2.4 細胞シート自動積層化装置
2.5 組織ファクトリー
2.6 おわりに
3 無菌操作 (佐々木次雄)
3.1 はじめに
3.2 製造施設,設備装置
3.3 アイソレータの特徴
3.3.1 アイソレータグローブのリーク
3.4 品質リスクマネジメントの活用
4 培地と関連試薬 (福田雅和, 新井華子, 藁科雅岐, 上村光宏, 竹田康弘)
4.1 はじめに
4.2 基礎培地
4.3 ヒトES・iPS用培地
4.3.1 オンフィーダー培地
4.3.2 フィーダーフリー培地
4.3.3 ゼノフリー培地,アニマルフリー培地
4.4 間葉系幹細胞培地
4.5 培養基質・フィーダー細胞
4.6 サイトカイン
4.7 低分子化合物
4.8 細胞分散剤
4.9 未分化マーカー抗体・未分化マーカーレクチン
5 培養装置 (松田博行)
5.1 はじめに
5.2 培養装置について
5.2.1 バイオプロセスで用いられる培養装置
5.2.2 シングルユース培養装置
5.3 シングルユース培養装置の使用上の注意点
5.3.1 シングルユース製品の弱点
5.3.2 シングルユースバッグのフィルムについて
5.4 シングルユース培養バッグによる動物細胞培養例
5.4.1 細胞培養について
5.4.2 シングルユース動物細胞培養バッグを使用する利点
5.4.3 シングルユース培養バッグでの実例
5.5 シングルユース培養槽の再生医療への応用
5.6 シングルユース培養槽の課題
5.7 おわりに
6 培養容器 (服部秀志, 村岡恵, 土屋勝則)
6.1 はじめに
6.2 細胞製造に用いられる培養容器の現状と今日の開発動向
6.2.1 汎用容器
6.2.2 閉鎖系培養容器
6.2.3 3次元培養用容器
6.2.4 細胞シート作製用容器
6.2.5 接着性を制御した培養容器
6.2.6 大容量化への展開
6.3 標準化の必要性とFIRMの取り組み
6.4 おわりに
7 細胞搬送 (青山朋樹, 仙石慎太郎)
7.1 はじめに
7.2 ガイドライン
7.3 搬送が生じる場面
7.4 搬送時の外部環境により細胞が受けるダメージ
7.5 基本的三重包装
7.6 搬送容器の開発例
7.7 搬送システム
7.8 おわりに
第5章 臨床研究事例
1 iPS細胞 (吉田信介, 一阪朋子, 建田幸子, 金子新)
1.1 はじめに
1.2 再生医療用HLA‒ホモiPS細胞ストックプロジェクト
1.3 FiTにおけるiPS細胞ストックの製造および品質評価
1.4 セルバンクとしてのiPS細胞ストック
1.5 今後の課題
2 表皮細胞シート (井家益和)
2.1 はじめに
2.2 皮膚再生医療の歴史とコンセプト
2.2.1 培養表皮
2.2.2 培養真皮
2.2.3 複合型培養皮膚
2.3 表皮細胞シートの製造
2.4 表皮細胞シートの対象疾患と臨床研究
2.4.1 重症熱傷
2.4.2 先天性巨大色素性母斑
2.4.3 表皮水疱症
2.4.4 尋常性白斑・白皮症
2.4.5 その他の疾患
2.5 展望
3 軟骨細胞シートによる関節再生医療 (豊田恵利子, 佐藤正人)
3.1 はじめに
3.2 関節軟骨再生医療の潜在的対象疾患
3.3 軟骨損傷治療の現状
3.4 軟骨細胞シートによる関節軟骨再生
3.5 細胞シート治療の安全性の確認
3.6 自己軟骨細胞シートによる関節治療臨床研究
3.6.1 軟骨細胞シート治療の適応
3.6.2 軟骨細胞の採取
3.6.3 細胞シートの製造
3.6.4 細胞シートの移植
3.6.5 エンドポイント
3.7 細胞シートによる再生医療の課題と今後の展望
4 同種ヒト間葉系幹細胞の再生医療等製品開発事例 (毛利善一)
4.1 会社沿革と概要
4.2 細胞医薬品開発
4.2.1 確認申請
4.2.2 製造工程
4.2.3 品質評価
4.2.4 非臨床試験
4.2.5 第Ⅰ/Ⅱ相試験
4.2.6 第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験
4.3 海外状況と今後の展開
5 再生医療におけるがん治療の普及・発展へ向けた取り組み (泉謙道)
5.1 はじめに
5.2 医療機関への細胞加工支援(免疫細胞療法総合支援サービス)
5.2.1 細胞培養加工施設の設計・運用
5.2.2 細胞培養・加工技術・品質管理ノウハウの提供
5.2.3 細胞加工技術者・品質検査技術者の育成
5.2.4 資材・試薬・消耗品などの供給
5.2.5 医療管理システムの提供
5.3 がん免疫細胞治療
5.3.1 アルファ・ベータT(αβT)細胞療法
5.3.2 ガンマ・デルタT(γδT)細胞療法
5.3.3 樹状細胞(DC)ワクチン療法
5.3.4 NK細胞療法
5.3.5 CTL療法
5.4 根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine:EBM)推進の取り組み
5.5 当社の法改正対応について
5.5.1 再生医療等安全性確保法への対応
5.5.2 医薬品医療機器等法への対応
5.6 おわりに
第6章 再生医療等に使用される細胞加工物の品質・安全性評価―リスクベースアプローチの考え方― (佐藤陽治)
1 はじめに
2 再生医療,細胞治療,細胞加工物
3 細胞の「加工」について
4 細胞加工物の品質・安全性評価の原則
5 リスクベースアプローチの具体的な考え方に関するEUのガイドライン
5.1 ATMPの規制における基本原則 : リスクベースアプローチ
5.2 EMAのリスクベースアプローチ・ガイドライン
5.3 EMA/CAT/CPWP/686637/2011
5.3.1 EMAガイドラインの対象
5.3.2 リスクベースアプローチの方法論
5.3.3 リスク
5.3.4 リスク要因
5.3.5 リスクプロファイリング
5.3.6 販売承認申請書類への適用
6 わが国の規制環境においてリスクベースアプローチをどう活用するか
7 おわりに
第7章 培養細胞の微生物安全性 (清水則夫, 外丸靖浩, 渡邊健, 森尾友宏)
1 はじめに
2 再生医療の微生物安全性確保
2.1 原材料の微生物安全性
2.2 製造工程における微生物安全性
2.3 最終調製物の微生物安全性
3 再生医療等製品および特定細胞加工物の微生物試験法
3.1 無菌試験とエンドトキシン試験
3.2 マイコプラズマ否定試験
3.3 ウイルス試験
4 新しいウイルス・マイコプラズマ検査系の開発と再生医療への応用
4.1 ウイルス検査系
4.2 マイコプラズマ検査系
4.3 ウイルス・マイコプラズマ同時検査
4.4 微生物の迅速定量法
5 細胞培養工程におけるウイルス・マイコプラズマ動態の検討
6 おわりに
第8章 再生医療の実用化に向けた現状と課題 (齋藤充弘)
1 はじめに
2 再生医療の実用化を加速する規制改革の取り組み
3 再生医療の実用化を支援する体制
4 再生医療の特質性を理解した実用化研究
5 再生医療の実用化・普及のための問題点
6 最後に
第9章 臨床研究の保険制度 (岡田 潔)
1 はじめに
2 日本における再生医療臨床研究に関する医療保険制度とその問題点
2.1 臨床研究の費用と先進医療制度,医師主導治験
2.2 再生医療の保険導入に関する問題について
3 日本における臨床研究の賠償責任保険と補償について
第10章 再生医療認定医制度および臨床培養士制度における教育訓練システムの構築 (江副幸子)
1 はじめに
2 教育システム構築の構想
3 認定医制度
4 臨床培養士制度
5 再生医療産業化における人材教育とその課題